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​「のこり化す

 
展示期間:2020年9月13日〜2020年11月8日

開廊時間:土日 12時〜18

​上野山絢香 / 章凱帆 / 土屋柚衣 / 中谷桃子 / NaN(ワタナベユウヤ)/ ヒラノショウマ

今回の展覧会では、再構築をテーマに作品の制作、展示を行う。

メンバーは過去に作った作品を用意し、それぞれの作品を破壊する。その後にこの破壊された作品の破片を材料に新たに作品を再構築し、展示を構成していく。破壊されて原型を失うことを想定せずに制作した作品がこの展覧会において破壊されたとき、作者はこの現実を良い方向に進めることはできるのか。当然、消化不良で終わってしまうという結果も考えられる。

制作作業の終了後、メンバーそれぞれが再構築する過程、そして完成した作品を見て何を思い、何を感じ、何を求めたのかを記録し、それらをまとめ、作品とともに発表する。この展覧会は、参加した作家が再構築をテーマに作品と、そして自らと向き合うものである。(企画:ヒラノショウマ)

​上野山絢香 「ふたつの風景」

2年前童話カエルの王子様の題材の作品を制作した。カエルの王子様がカエルのまま愛されるには王子の献身的な愛が必要だと当時思っていた。それが壊された時、カエルを愛すには彼女が大人になることしかないのかもしれない。

大人になることとは、少女の心と対話していくことだと思う。少女の心は歳を重ねていくにつれ表面では見えないものになるけれど確実に現在の自分と交わっている。

この作品では私が住んでいる山形で見た現在の風景と地元で見た幼い頃の風景が交わっている。過去との対話の中で今を見ていき、それらが互いに交わり行き来し、また新たな自身を更新しつつ自分がなりたい大人になっていく。このことは再構築をする過程で考え、またこれらは自身の再構築だと感じる。

​土屋柚衣 「縁」

破壊され、ただの紙やキャンバスの破片となった作品は、元々は自然が生み出した素材であったことを私に思い出させた。さらに他人の作品だったものが自分の作品の一部となることで、自分の作品制作にも他の作品から受ける影響があることを感じた。そこから作品と自然、作品と人の「つながり」に目を向け制作した。

破壊された作品を縫い合わせる糸はつながりを意味し、輪には作品と自然、人がお互いに影響し合い循環するイメージを持たせている。

今回、破壊と再構築をしたことで、自分がいくつのもつながりの中で作品を制作していることを改めて実感した。そして私にとって作品は自分自身を映し出すものであるため、言い換えれば、自分と自然、自分と人の「つながり」を表していることになる。そうしたつながりを持つことで安定を求めているのかもしれない。

章凱帆 「収容の尺度」

壊された作品制作の雰囲気を見て、カラスの話を思い出した。カラスは仲間が亡くなるとお葬式をする。追悼のためではなく、この行動はただ生存戦略の一部として、行なっている。残酷だが、脅威を学習し、より生き残るための単純さに震撼する。

人間は動物より、完璧な社会性を持つおかげで、破壊の本能を抑えることができるが、制限されているとも言える。成長に伴い、破壊に対する恐怖感に支配され、破壊の行為よりも、破壊の代償に怖がっているのかもしれない。

自然的破壊でも、人為的破壊でも、啓発性をもたらすことを忘れず、勉強の一部として、前に進んでゆくのは大事であることを示したい。

中谷桃子 「藍コーナー」

 

破壊された私の分身である絵画の破片を思いのままに独立させていく作業から、プラナリアのように一つ一つが生まれ変わる感覚がした。それと同時に、その一つ一つの表層が、重大な過去の記憶を見せているように思えた。プラナリアは分裂しても同じ過去を持っているらしい。いくら分裂しても、いくら変形しても、過去が私を作る限りなくてはならないものとして存在し続ける。重大な過去として、私は幼い頃、場面緘黙症であったため、今でも安全で安心する居場所は必要で、常につくっている。だからこのプラナリアに似た物体のために、いつでも人の干渉から逃れられるよう居場所を作ってあげることにした。

NaN(ワタナベ ユウヤ) 「飛ぶために集めて」

 

解体前の作品は「未熟な自分は立ち上がらなくてはならない」という事がテーマであった。

再構築後はその後を描かなくてはと思った。

制作過程はとても辛かった。画家として他人の作品を破り破壊すると言う行為は行って良いものか、心が傷んだ。再構築中も同様であった。他人の絵を使い創るこの作品は自分の作品と呼べるのだろうか。そして思い出した。私は1人で作品を創り終えた事などないのだ。助けられ、励まされ私は作品を描いてきた。

今回も同様であった。それが、行為だけでなく、形として残ったものが今回の作品だと感じる。

描くモチーフもそれに合わせる事にした。

友と共に、風を切り裂きながら歩き、飛び立つために羽化をして行く姿を描いた。

ヒラノショウマ 「From outside / From inside」

破壊と再構築というのは人生の中で必然的なことであり、これがなければ新たな光景を見ることはできない。新たな場所で生きていくことはできない。今回の取り組みを通して改めてそう感じる。そこで、新たな人生に寄り添えるような作品を生み出そうと考えた。形を失ったものを再構築し、人生に重ねてゆく。そこに新たな光景が生まれることを望む。

上野山絢香

 

東北芸術工科大学美術科洋画コース2年生。地元の北海道と東北で体験したことをモチーフとし、風景画を中心に絵画作品を制作している。東北画は可能か?に参加。

 

章凱帆

 

東北芸術工科大学美術科日本画コース2年生。主に風景や植物をモチーフに懐かしさや温かみを感じる作品の制作を行っている。

 

土屋柚衣

 

東北芸術工科大学美術科日本画コース2年生。主に動植物をモチーフとし、そのものが持つ美しさや魅力を見つけ描いている。自分が感じたことや思ったことを記憶し残していくためのものとして、現在は日本画を描いている。

 

中谷桃子

 

東北芸術工科大学美術科洋画コース2年生。立体から絵画、インスタレーションなど、ジャンルにとらわれずに作品制作をしている。感覚や感情のアウトプットが主な制作スタイル。

 

NaN(ワタナベ ユウヤ)

 

東北芸術工科大学美術科日本画コース2年生。見上げた空のまばらな星々や夢に見た理想の光景、物語、日常や幻想の中で一瞬だけ見せる思わず見入ってしまうような瞬間などを集めて絵を描いている。

 

ヒラノショウマ

 

2019年に東北芸術工科大学を中退後、宮城県石巻を拠点に作家活動、オルタナティブスペースの運営を行う。今回の展覧会の原案を企画。

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